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地図をつくらない

余生というにはみじかく、夏休みにしては長い

酒粕あまいかしょっぱいか

深夜4時。

どうしても粕汁が食べたくなってしまった。

冬にビアガーデンを探して歩くようなものである。

それでも食べたくなっちまったんだから、しょうがない。

 

長髪、というかちょんまげ、口許にも顎にもひょろひょろとひげをたくわえた三十路男が突如あらわれ「酒粕置いてないすか」なんて訊くものだから、店員さんもびびった。

すこしでも威圧感と違和感をやわらげようとバンTことバンドTシャツ(かつての名古屋の雄・シャビーボーイズ)で接しやすさを増したつもりだったのだが、知らんひとは知らん。当たり前だ。いくら鹿野淳が帯にコメントを寄せたって、そのまま「こんにちは未来」とはならぬ。ザッツ・28時のドキュメンツ。

 

そういったわけで、酒粕などなかった。

晩夏の入り口に差し掛かったこの世界に酒粕などなかったのだった。

ふしぎとそのことに安堵をおぼえながら(だって、8月に白菜があるんだぜ。おかしいだろう)ぼくは白味噌を買って帰った。鴨川べりの一筋を端歩、ぐんぐんとゆく。寄せるというより、せめてものお願い王手であった。

 

昆布とかつおで薄く出汁をとり、ややトチ狂った量の日本酒を加え、あく抜きしたコンニャク、油抜きしたおあげさん、大根、にんじん、豚コマを煮る。すこしだけしょう油も。

 

さて。

ぼくはいったいなにをしているのだろう。

 

あわれ粕汁ならぬ白味噌汁よ、つたえてよ。

男ありて早朝にひとり料りながらおもいにふけると。